『テーラー 人生の仕立て屋』最小限のセリフと巧みな音使いで魅せる

9月3日に公開の注目作品『テーラー 人生の仕立て屋』(原題:Tailor)。倒産寸前の50歳の仕立て屋が、起死回生のためにウエディングドレスを作り、人々を笑顔にしていく。最小限のセリフと美しい映像で語られるアート性の高さは必見だ。

少ないセリフ、音と映像で効果的に演出

仕立ての作業音がポップな音楽に

 最初のセリフが発されたのは、本編が始まってからどれくらい経ったころだろうか。映画の冒頭は、ミシンを小気味よく踏む音、布をはさみで裁つ音…仕立ての作業音と一体化した音楽が、作品にポップでユーモアあふれる印象を与える。
 物語は最小限のセリフで進んでいくが、迷子になることはなかった。役者の表情や一つ一つのシーンを見逃さなければ、「あぁ、きっとこうなったんだろうな」「こういう心境なんだろうな」と十分理解できる。ニコスの採寸をした後の嬉しそうな顔や、結婚パーティーでのヴィクトリアの大人びた表情、ニコスを手伝うオルガの夫の嫉妬心むき出しの振る舞いなど、印象的だったシーンは枚挙にいとまがない。ぜひ映像や音の一挙手一投足に集中して観てほしい。

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“貧困問題”という裏テーマ

監督はソニア・リザ・ケンターマン

 テッサロニキ国際映画祭、ベルガモ・フィルム・ミーティング、サンフランシスコ ギリシャ映画祭などで数々の賞を受賞した本作。監督はソニア・リザ・ケンターマンだ。本作で長編デビューを飾った彼女は、実は社会学者でもある。そんな彼女の作品の多くには、“貧困問題”という裏テーマがあるのが特徴だ。
 「本作ではもちろんギリシャを激しく襲った経済危機下の貧困を描いていますが、それと同時に時代遅れになっていく昔ながらの職業についても描きたかった」と語るソニア監督。“貧困問題”という視点で本作を観ると、また違う感想を持てるだろう。

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『テーラー 人生の仕立て屋』のあらすじ

崖っぷちの仕立て屋が思いついたのは“移動式テーラー”!?

アテネで36 年間、高級スーツの仕立て屋店を父と営んできた寡黙なニコス。だが不況で店は銀行に差し押さえられ、父は倒れてしまう。崖っぷちのニコスは店を飛び出し、手作りの移動式屋台で仕立て屋を始める。だが道端で高級スーツは全く売れず、商売は傾く一方…。そんな時、思いがけないオファーがくる。「ウェディングドレスは作れる?」これまで紳士服一筋だったニコス。思い切ってオーダーメイドのドレス作りを始めるが―!?
一歩を踏み出した生真面目な仕立て屋。彼が作る色とりどりのドレスが、新たな出会いと幸せを繋いでいく、希望溢れる感動作!

『テーラー 人生の仕立て屋』

【公開日】2021年9月3日(金)
新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
【配給・宣伝】松竹株式会社
© 2020 Argonauts S.A. Elemag Pictures Made in Germany Iota Production ERT S.A.

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