スマホで撮影したドキュメンタリー映画|難民家族の5600kmの旅

アフガニスタンで死刑宣告を受けた映画監督の家族が難民となり、安住の地を求めてヨーロッパまで旅する姿を追った『ミッドナイト・トラベラー』が9月11日に公開される。3台のスマホが映し出す究極のドキュメンタリー映画だ。

撮影はたった3台のスマホで

映画監督として究極のドキュメンタリーを撮る

 『ミッドナイト・トラベラー』の監督はタリバンから死刑宣告を受けたハッサン・ファジリ。ハッサンは、タリバンの指導者を主人公に描いた作品がきっかけで、家族4人でアフガニスタンからヨーロッパまでの約5600kmを難民として旅することになる。父親として家族を守らなければならないという重圧がありつつも、映画監督として“難民家族の困難な旅”という状況は胸に迫るものがあり、映画にすることを決めたそうだ。
 命の危険と隣り合わせの旅では、もちろん立派な機材を持ち歩く余裕などない。片手に収まるスマホは素早く撮影することができ、本作をつくるにはぴったりだったという。途中、拘束されて撮影ができなかった期間もあるようだが、人目につかないように必死に走って移動する場面や、難民差別をする現地人たちとの闘争の様子など、家族が直面する困難をスマホがリアルに映し出す。

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幼い娘たちの目に映る世界とは

騙され、差別され、道端で野宿…それでもたくましく生きる

 長い旅の途中、家族は様々な困難に直面する。移民業者に騙されて多額の金を要求され、支払わなければ娘たちを誘拐すると脅迫されたり、移動先では難民をよく思わない人々から石を投げつけられ、暴力を振るわれたりする。寝る場所も食料も確保されていない旅では、手足が凍ってしまいそうな寒空の下、道端で野宿をすることも。
 そんな過酷な旅でも、2人の幼い娘は明るく振る舞う場面がとても多い。特に長女のナルギスは、自分たちの置かれてれいる状況や、両親が命をかけて自分たちを守ってくれていることを理解しているようだった。先の見えない苦しい現状でも、せめて自分たちは笑っていようという気遣いだろうか。ある日、ナルギスはマイケル・ジャクソンの「They Don’t Care About Us」を歌いながら踊っていた。“僕らのことなんて誰も考えてない―”曲の歌詞がナルギスの心境そのものを表しているようだ。

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『ミッドナイト・トラベラー』あらすじ

故郷を追われて難民になった家族の現実

2015年、映像作家のハッサン・ファジリはタリバンから死刑宣告を受ける。自身が制作したアフガニスタンの平和に関するドキュメンタリーが国営放送で放送されると、タリバンはその内容に憤慨し、出演した男性を殺害。監督したハッサンにも危険が迫っていた。彼は家族を守るため、アフガニスタンからヨーロッパまで5600km の旅に妻と2 人の娘たちと出発することを決意する。そしてその旅を3 台のスマートフォンで記録した。

『ミッドナイト・トラベラー』

公開日:2021年9月11日
配給 :ユナイテッドピープル
©2019 OLD CHILLY PICTURES LLC.

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