2021年の顔|濱口竜介監督作品を世界が絶賛する理由

『ドライブ・マイ・カー』がカンヌ国際映画祭で脚本賞受賞、第79回ゴールデン・グローブ賞 非英語映画賞にノミネートされた濱口竜介監督。新作の『偶然と想像』(2021年12月17日公開)は第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した。2021年の日本映画界の顔ともいえる濱口竜介監督は、なぜ世界から絶賛されるのか?

濱口竜介監督の注目作品

近年の映画祭で多数の賞を受賞するなど、国内のみならず世界から注目を集める気鋭の映画監督・濱口竜介。 まずは、ますます人気が高まる濱口監督の代表作5作品の概要とあらすじを紹介。

『ハッピーアワー』2015年

ロカルノ国際映画祭 最優秀女優賞受賞を受賞した本作。メインの4人の女性を演じたのは、演技の経験がない一般人である。そのほかの出演者もほとんどが演技経験ゼロという挑戦作品だ。濱口監督が主催したワークショップで選ばれた出演者たちの演技に注目。
また、本作は317分(5時間17分)の超長編だ。年末年始の休暇中にゆっくりと観てはいかがだろうか?

◆『ハッピーアワー』あらすじ
あかり、桜子、芙美、純は30代後半の仲良し4人組。なんでも話せて隠し事などないように思っていた彼女たちだったが、実は純が1年という長期にわたって離婚協議をしていたことを思わぬ形で知ることに。離婚裁判は純にとって不利に進んでいたが、それでも諦めない彼女の姿に、3人は自分の人生を見つめ直すのだった。

出演:田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りら ほか

https://www.youtube.com/watch?v=PkfTvhZ5XuQ

『寝ても覚めても』2018年

濱口監督初の商業映画。東出昌大と唐田えりかの不倫騒動で思わぬ注目を浴びた本作だが、カンヌ国際映画祭 コンペティション部門にもノミネートされた良作である。東出が演じた対照的な1人2役や、朝子と麦が出会う映像づくりがみどころ。原作は柴崎友香の小説「寝ても覚めても」(河出書房新社刊)。

◆『寝ても覚めても』あらすじ
朝子と麦は運命に出会い、恋に落ちる。しかし麦は朝子の前からある日突然姿を消してしまった。それから数年後、朝子は麦と瓜二つのサラリーマン・亮平に出会う。真っ直ぐに想いを伝えてくる亮平に惹かれていった朝子だが、亮平には麦のことを告げられないでいた。人は一体、人の何に惹かれるのか―?

出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子 ほか

『スパイの妻 劇場版』(共同脚本)2020年

ベネチア映画祭で銀獅子賞を受賞。黒沢清監督がメガホンを取り、NHKで放送されたドラマを映画化した。脚本は黒沢清監督、濱口、野原位の共同で作られた。3人は黒沢監督が教授を務める東京藝術大学大学院 映像研究科で出会った師弟関係。濱口と野原が書いた内容を、黒沢監督が直す形でつくられてたという。

◆『スパイの妻 劇場版』あらすじ
1940年、神戸で貿易会社を営む優作は、満州で恐ろしい国家機密を偶然知る。この秘密を正義のために世の中に知らしめようとする優作だったが、スパイとみなされてしまう。妻の聡子はスパイの妻だと指をさされても、愛する夫の優作を信じるのであった。

出演:蒼井優、高橋一生、坂東龍汰、恒松祐里、みのすけ、玄理、東出昌大、笹野高史 ほか

『ドライブ・マイ・カー』2021年

村上春樹の短編小説「ドライブ・マイ・カー」(短編小説集「女のいない男たち」所収)の映画化。
カンヌ国際映画祭で日本映画としては史上初となる脚本賞を受賞。国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の独立賞も受賞し、4冠獲得の偉業を果たした。ボストン映画批評家協会賞で作品賞、監督賞、脚本賞、西島秀俊が主演男優賞を受賞。なお、2020年に作品賞を受賞した『ノマドランド』はアカデミー賞の作品賞を受賞している。また、第79回ゴールデン・グローブ賞 非英語映画賞にもノミネートされ、ますますアカデミー賞への期待が高まっている2021年の注目作品だ。

◆『ドライブ・マイ・カー』あらすじ
舞台俳優で演出家の家福(かふく)には、愛する妻の音(おと)がいた。しかし、音は秘密を残したままこの世を去ってしまう。2年後に家福は寡黙な専属ドライバー・みさきに出会い、互いの過去を話していくなかで、家福はある事実に気づかされていく。

出演:西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか、パク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアン、アン・フィテ、ペリー・ディゾン、安部聡子 ほか

『偶然と想像』2021年

ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した濱口監督の最新作。短編映画を撮りたいと思った濱口監督だが、上映してくれる映画館が少ないことから、3つの短編作品をあわせて1作品とした本作。濱口監督初の短編集映画である。2021年12月17日(金)からBunkamuraル・シネマほかにて公開。

◆『偶然と想像』あらすじ
「魔法(よりもっと不確か)」 撮影帰りのタクシーの中で、ヘアメイクのつぐみから惚気話を聞かされたモデルの芽衣子が向かった先とは?
「扉は開けたままで」 大学でゼミの単位が足りず内定が取り消された佐々木。女友達に教授を貶めるよう色仕掛けしてもらうが…。
「もう一度」 同窓会のために地元に戻った夏子は、20年ぶりに友人のあやと再会する。再会を喜ぶ2人だが、想像もしない展開が待っていた。

出演: 古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉 ほか

濱口竜介監督作品の魅力とは?

淡々とした中にある独特の空気感

濱田監督の作品は、明快な起承転結や劇的な展開を描いたものではなく、淡々と、丁寧に心情をくみ取るようなものが多い。ただ、なにか独特の空気感がある。演者がカメラ目線でじっと長い間こちらを見てくるようなシーンや、緊張感があるはずの場面で、一般的には演者に寄って撮られるであろうところを、ものすごく引きで撮るなど、“一般的”な映画の撮り方とは何かが違う作品になっている。ただ、その違和感が「変だな」で終わるのではなく、作品の中でまとまっているから不思議だ。

また、演者の反応を引き出すのがとても得意な監督だ。濱口監督は、撮影の前に行われる本読み(読み合わせ)の時には、“感情を込めて読まない”という決まりを設けているそうだ。本番になって、初めて演者同士が感情の入った芝居をすることで、新鮮な反応を引き出すことができるという。

映画監督・濱口竜介(はまぐち りゅうすけ)
1978年12月16日、神奈川県生まれ。幼少期は父親の仕事のため2年に1度程度のペースで引越しを繰り返す生活を送る。東京大学の文学部へ進学し、映画研究会に所属した。大学在籍中に映画づくりを始め、大学卒業後は映画の助監督やTV番組のアシスタントディレクターに。その後、東京藝術大学大学院 映像研究科へ2期生として入学。そこで黒沢清監督と出会い、映画をより深く学んでいった。修了作の『PASSION』(2008年)はサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品されるなど高い評価を得た。

濱口竜介監督の過去作品

演者に演技経験のない一般人を起用したり(「ハッピーアワー」)、他国との合作にも取り組んだり(「THE DEPTHS」)、演劇との融合作品を手掛けたり(「親密さ」)と、挑戦を続けている濱口監督。2012年の『明日』は41人の監督たちによる1本3分11秒の短編集映画で、2013年には東北のドキュメンタリー映画を長尺の3部作で制作した。これまでに濱口監督が関わった主な作品はこちら。

  • 2021年『偶然と想像』短編オムニバス 121分
  • 2021年『ドライブ・マイ・カー』179分
  • 2020年『スパイの妻 劇場版』115分(共同脚本)
  • 2018年『寝ても覚めても』119分(日本・フランス合作)
  • 2016年『天国はまだ遠い』38分
  • 2015年『ハッピーアワー』317分
  • 2014年『不気味なものの肌に触れる』54分
  • 2013年『うたうひと』120分(東北記録映画3部作)
  • 2013年『なみのおと』142分(東北記録映画3部作)
  • 2013年『なみのこえ 気仙沼』109分(東北記録映画3部作)
  • 2013年『なみのこえ 新地町』103分(東北記録映画3部作)
  • 2013年『親密さ』255分
  • 2012年『明日』(41人の監督による短編集作品、1作品3分11秒)
  • 2010年『THE DEPTHS』121分(日本・韓国合作)
  • 2009年『永遠に君を愛す』58分
  • 2008年『PASSION』115分(大学院修了制作)
  • 2006年『記憶の香り』27分
  • 2005年『はじまり』13分
  • 2005年『Friend of the Night』44分
  • 2003年『何食わぬ顔』98分(大学在学中に制作)
濱口竜介監督最新作『偶然と想像』

<作品情報>
2021年12月17日(金)Bunkamuraル・シネマほかロードショー
・第一話「魔法(よりもっと不確か)」
・第二話「扉は開けたままで」
・第三話「もう一度」
監督・脚本:濱口竜介
プロデューサー:高田聡
出演:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉 ほか
配給:Incline
上映時間:121分

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