映画『今夜、世界からこの恋が消えても』注目される次世代の映画スター・福本莉子が病を抱える難役で感じた目覚めとは

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の三木孝浩が監督を、『君の膵臓をたべたい』の月川翔が脚本を務めてタッグを組んだ、切ない映画『今夜、世界からこの恋が消えても』が公開される。主演は、なにわ男子の道枝駿佑と、若手女優の福本莉子というフレッシュな2人。眠りにつくと記憶を失ってしまう実在の病気「前向性健忘」を患う女子高生・真織(福本)と、そんな彼女を献身的に支え、自らも大きな秘密を抱える同級生の透(道枝)が紡ぐ物語だ。福本は、長澤まさみらを輩出した「東宝シンデレラ」で第8回グランプリに輝いた逸材。そんな注目株の彼女が、今作の撮影秘話を語ってくれた。

困難な役作り、道枝駿佑との再共演

「その優しさはまさに透そのもの」

演じた真織は、眠りにつくと記憶を失ってしまう女の子。実際に記憶障害を抱えている方のドキュメンタリー映像を見て勉強したのですが、人とのやり取りを真剣にメモしている様子や、相手をじっと観察する眼差しが、深く心に残り、役作りに生かせたと思います。それから、真織になりきって日記をつけるようにしました。彼女は毎夜「何時何分に何をした」と一日の出来事をまとめ、翌朝その日記をすべて読み返して予習する生活を送っています。彼女と同じように毎日書き続けていると、膨大なページ数になり、読み返すだけでも本当に一苦労です。それをずっと続けている真織の大変さや強さが、体験してみてよく分かりました。

透役の道枝さんとは、去年ドラマ『消えた初恋』で共演していました。今回の撮影前にも「また一緒にがんばろうね」と声を掛け合ったのを覚えています。脚本を読んだ時、透があまりに心がキレイで、真っすぐ過ぎる人だったので、「こんな良い人って現実にいるのかな？」と思ってしまったんです。だけど、今回の撮影を通じて、改めて道枝さんと過ごしてみると、その優しさはまさに透そのものだって気が付いて…！　ちゃんと実在していましたね(笑)。

楽しんで撮影できたデートシーン

「『なんかそういうのっていいなぁ』とキュンとしちゃいました！」

劇中には、誰もが憧れるようなデートシーンがたくさん登場します。なかでも私のお気に入りは、ショッピング中に真織が何気なくみていた髪かざりを、透があとからスマートにプレゼントしてくれる場面。「なんかそういうのっていいなぁ」とキュンとしちゃいました！

実はデートの点描のシーンはセリフがなく、全部アドリブなんです。真織自身のスマートフォンで撮影するシーンもあり、監督からも「二人で行ってこい」みたいな感じで自由に演じさせてもらいました。

それと、水族館のロケも楽しかったです！　小さい頃は家族とよく行ってたんですけど、大人になって来ると感じ方が違いました。撮影してるとイルカや魚たちが私たちを見てくるんです。そして本番になると、ちょうど良いところでこちらに来るんです。まるで計算して映りに来ているみたいに。そういう活発な姿を見ると「やっぱり彼らも生きてるんだ」と思えて、とても興味深かったです。でも魚も同じこと考えてるのかな。「この人たち、また私たちのこと見にきたよ」みたいな？（笑）

真織という役を演じた苦労と達成感

「自分のなかに真織を感じる瞬間に出会えたことは得がたい経験」

私は楽しい思い出はもちろんですけど、たとえ心の傷になってしまうような辛い出来事も、決して忘れたくないと思うんです。その時すごく悩んだことが、きっと次に進むためのバネになるはずだから。そういう気持ちは、きっと真織も同じなんじゃないでしょうか。

真織という役は私にとって、とても難しい役で、彼女を掴むのにとても苦労しました。でも、ある場面で、自然と涙が溢れてきたことがありました。それは、透とピクニック中に真織がうっかりうたた寝をしてしまい、彼が誰だかわからず混乱してしまう悲しいシーン。私自身と真織の感情が重なったというか…。自分のなかに真織を感じる瞬間に出会えたことは、本当に得がたい経験です。女優として、ひとつ成長できていたら嬉しいですね。

RIKO FUKUMOTO
2000年11月25日生まれ。
2016年、第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリに輝き、その後、女優として活躍する。現在放送中のC M「オロナミンＣ」やNHK高校講座「物理基礎」などに出演。『消えた初恋』では第31回年間ドラマ大賞2021の助演女優賞を受賞した。10月1日より舞台「アルキメデスの大戦」に出演する。

Photo：塚原孝顕　Text：水越小夜子　Styling：道端亜未　Hair&Make：伏屋陽子(ESPER)

（情報は公開時点のものです）