誰もが知る“さかなクン”の、誰も知らないすっギョい人生。『さかなのこ』
©2022「さかなのこ」製作委員会

■“話題の一冊”では、小説やコミックを映像化した作品の放送情報を紹介。ドラマや映画を見てから原作を読んで、より詳細な心理描写や物語の背景を楽しんでもよし、先に原作を読んで、思い描いた世界が目の前に広がるのを楽しんでもよし。自分好みに物語を2度味わえる作品たちはこちら!■

魚類学者・タレントとして活躍するさかなクンの半生を、彼の自叙伝をもとにフィクションを交えユーモアたっぷりに描いた映画『さかなのこ』。毎日魚を見つめ、その絵を描き、食べ続けても飽きないほど魚が大好きな主人公“ミー坊”を演じるのは、精力的に創作活動を続ける女優・のん。メガホンを取ったのは『南極料理人』『横道世之介』等、愛すべき主人公を温かく描いてきた沖田修一監督。さかなクン同様、好きなことに真っすぐに突き進んできたのん&沖田監督だからこそ作り上げることができた『さかなのこ』ワールドに引き込まれること間違いなし!

ミー坊を信じて応援し続ける母を演じる井川遥、幼馴染みのヒヨを演じる柳楽優弥など実力派俳優が脇を固める。原作者であるさかなクンが映画初出演を果たしていることにも注目。

日本映画専門チャンネルで8月8日(火)午後7:55~10:30に放送予定。19日(土)・25日(金)に再放送あり。

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©2022「さかなのこ」製作委員会

性別の違う、のんを起用した理由とは?

主演を聞いて驚いた人も少なくないはずだ。のん当人も「私が演じていいんだ⁉」という驚きがあったという。沖田監督はなぜ、性別の異なるのんをあえて、さかなクン役として起用したのだろうか?

これは、さかなクンの映画であって、さかなクンの映画ではありません。何かを猛烈に好きになった人の映画です。子供の頃から、ずっと変わらずに好きでいる。好きが、人生を決めていく。そんな強い気持ちを、さかなクンの生き方をもとに、映画にしたいと思いました。

その純粋な役を、のんさんにお願いしました。お二人とも何かが似ていると思いました。何かは言葉にできませんが・・・。

さかなクンを描くのに、性別はそれほど重要ではないと思いました。実際と顔が似ているとか似ていないとか、そういう問題を取っ払って、もっと自由に、さかなクンの映画を作りたいと思いました。

映画『さかなのこ』公式Twitterより https://twitter.com/sakananoko_jp/status/1500944794037600257

さかなクンの人生をただ忠実に映画化するのではなく「何かを猛烈に好きになった人」を自由に描こうとした時、のんが適役だったということだ。

2022年には、自らが映画監督と脚本、主演を務めた映画『Ribbon』を発表したのん。コロナ渦で発表の場を奪われた美大生が、さまざまな苦悩や葛藤に揺れ動きながらも、これまで自分を支えてくれたアートの力を信じ、自らの手で未来を切り拓くべく再び立ち上がる物語だ。いち表現者として、表現の力を信じる彼女の「純粋さ」と好きなことへの「真っすぐさ」が、さかなクンとの共通点といえる。

のん自身も、「好きなことに真っすぐ突き進んでいる」という部分だけでなく、「誰かに楽しんでもらいたい」というさかなクンの姿勢や、こだわりはじめると止まらないタイプというところが似ていると感じたという。

のんが本読みに参加した際、ホワイトボードに「男か女かは、どっちでもいい 沖田」という貼り紙がされており、それを見た瞬間、ビビッときたという。「どっちでもいいんだ、沖田監督はそう考えるんだ。私は『お魚好きのミー坊』を全力で演じればいいんだな」と安心して撮影に臨めたと語った。

当初はオファーに驚いたのんも、次第に自分だからこそ演じられると感じるようになったという。

「自分以外にさかなクンを演じられる人がいるのだろうか?」と考えたこともありました。性別問わず思い浮かべてみたんですが……やっぱり私が一番しっくりくるなって思ったんです。

映画.com さかなのこ : インタビューより  https://eiga.com/movie/96792/interview/

観た人たちからも、
ーこの役は彼女じゃなきゃダメだったね!って思わしてくれるハマり役。あのキラキラした瞳たまりません。
ーのんの演技がすごい、本当に楽しそうに演じてる。
など好評だ。

さかなクンのリアルな半生を知ることができる原作

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ー原作紹介ー
■さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~=書名 ■さかなクン=著者
■講談社=刊 ■定価1430円

映画ではフィクションも交えて描かれているが、彼のリアルな人生を知りたいなら原作を。
彼らしい生き生きとした文章で書かれており、かつフリガナも振ってあるので子供でも読めるようになっている。児童書でもありながら、彼の生き方、また彼の好きをサポートし続けたお母さんの姿勢に感銘を受ける親世代も多数。

小さな頃から好きになったら一直線だったさかなクン。そんな彼がお魚を好きになったキッカケは、なんと友達が自分のノートにいたずらで書いたタコの落書き! その日から、これは何だ⁉ と図鑑を調べまくり、タコだと分かるとそれからは頭の中はタコだらけ・・・。夕飯には毎日タコをリクエストして、1か月ずっとタコ料理。さらに生きているタコに会いたいとタコを捕まえにいき、家まで持って帰ってきたり。その後タコだけでなく他の魚にも興味を持つようになり、学校帰りには魚屋に寄り、土日には水族館へ通う日々へ。水族館で1つ1つの水槽を1時間以上も見ていた彼に、お母さんも一緒に付き合っていたという。

魚に没頭しすぎて、成績は案の定の結果に。家庭訪問で担任の先生から注意を受けたお母さんは「あの子は魚が好きで、絵を描くことが大好きなんです。だからそれでいいんです……。成績が優秀な子がいればそうでない子もいて、だからいいんじゃないですか。みんながみんないっしょだったら先生、ロボットになっちゃいますよ。」と彼の好きを応援し続けた。

そんな彼も、ついに仕事をしなければならない年齢に。怒られっぱなしのお魚屋さんでのアルバイト、失敗だらけの水族館での実習、大好きな魚たちとの別れが多すぎた熱帯魚屋さんでのアルバイトなどなど、大好きな魚と関わろうとするものの思っていたのと違うことだらけ。そこから、どうやって「さかなクン」として活躍するようになったのか・・・それは本書でのお楽しみ。

[映]さかなのこ

放送局:日本映画専門チャンネル
放送日:2023年8月8日
放送時間:午後7:55~10:30
制作年/国:2022年/日本
監督:沖田修一
出演:のん、柳楽 優弥、夏帆、磯村 勇斗、岡山 天音、さかなクン、三宅 弘城、井川 遥ほか

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